パテックフィリップを語る上で欠かせないのがパーペチュアルカレンダー。ミニッツリピーターやトゥールビヨンなど他にも素晴らしい機構がありますが、パーペチュアルカレンダーは最も実用性に優れた機構であると感じます。そのパーペチュアルカレンダーの歴代モデルを調べていきたいと思います。
目次
97975 1925年
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1925年に製造された世界初腕時計のパーペチュアルカレンダー。もともとはペンダントウォッチ(小さい懐中時計)用に製造されたムーブメントを乗せているので12時位置に曜日、3時位置にムーンフェイズ、6時位置に月、9時位置にスモールセコンドと現代の時計ではあまり見ない造りになっています。カレンダーはフランス語表記ですね。
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34.4mmのイエローゴールドのケースには手彫りの模様が施され、ハンターケースになっています。
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1927年アメリカのコレクターであるトーマス・エメリーに販売され、現在はパテック フィリップ・ミュージアムに収蔵されているそうです。
96 1937年
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カラトラバの原点である96にパーペチュアルカレンダーを乗せたモデル。曜日と月は中央の窓枠に表示され6時位置にスモールセコンドとムーンフェイズが配置されます。日付はレトログラードで現在にも受け継がれる配置はこのころから存在します。ムーブメントはヴィクトラン・ピゲ製。
1526 1941-1953年
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1941年はパテックフィリップの重要な年になります。パーペチュアルカレンダークロノグラフのRef.1518と1526が量産化されます。1526は1941-1953年の12年間で210本程製造され、多くがイエローゴールドで、一部でローズゴールド、1本のみステンレスで製造されています。
34mmのケース径でムーブメントはヴィクトラン・ピゲ製の12-120QP
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12時位置に曜日と月の窓枠、6時位置にスモールセコンド、ムーンフェイズ、日付とパーペチュアルカレンダーと思えないほどのシンプルさ。
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1527 1943年
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1943年に製造された1527は同じリファレンスでクロノグラフと通常バージョンに別れ、当時として大きい37.6mmのケース径で製造されました。
https://www.christies.com/en/lot/lot-5309213
クロノグラフは2010年10月にクリスティーズで6,259,000スイスフランで落札されました。現在のレートで日本円に直すとなんと7億5千万円程(2021年5月現在)
クロノグラフでない通常の1527は当時の経営者であったスターン兄弟のシャルル・スターンのために製造され着用していました。
1591 1944年
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2本のみ製造されステンレスが1本、イエローゴールドが1本のみ。防水性を兼ね備えた初のパーペチュアルカレンダーでありセンターセコンドも初。また軟鉄製ケースを採用し耐磁性に優れた実用性ある時計。こちらもヴィクトラン・ピゲ製のムーブメントを搭載。
https://www.christies.com/en/lot/lot-4982796
ステンレスモデルは2007年にクリスティーズで2,513,000スイスフランで落札されています。現在のレートで日本円に直すと3億円程(2021年5月現在)
2017年に登場した5320は1591に影響をうけている…はず
2497 & 2438-1 1951-1963年
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2つのリファンレスが存在し、基本的に同じ時計ですが、2438-1は裏蓋がスクリューバックになっています。
1951-63年の12年間で179本程製造され、前モデルの1526(34mm)からケースサイズが37mmと大きくなります。1944年に製造された1591でもセンターセコンドでしたが、2497は量産化されたパーペチュアルカレンダーで初のセンターセコンドを備えた時計としても知られます。
初期型は文字盤が1526と同じくアラビア数字とドットインデックスを交互に配置し、後期型はバーインデックスになっています。
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イエローゴールドが最も多く「YG>RG>WG」の順の製造本数でホワイトゴールドは3本のみ製造されたと言われています。
https://www.phillips.com/detail/patek-philippe/CH080217/231?fromSearch=2497&searchPage=1
ホワイトゴールドは2017年のフィリップスで2,292,500スイスフランで落札。
3449 1961年
1961年に3本のみ製造された希少モデル。個々のシリアルは799000、799001、799002で37mmのイエロゴールドケースでシルバーダイヤルになります。
これら3つともラグとベゼルがそれぞれ僅かに異なるため3448の開発のために製造されたと言われています。
799000は3段のベゼルと角ばったラグ
799001は2段のベゼルと角ばったラグ
799002は3段のベゼルとストレートラグ
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ムーブメントは23-300Q、超薄型の手巻きムーブメント
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3448 1962-1981年
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62-81年にかけて製造された初の自動巻きパーペチュアルカレンダー。「空飛ぶ円盤(UFO)」型と呼ばれる大きく丸く薄いケース、ラグが鋭いのが特徴的な時計。ケース計は37.5mm
計586本程製造され、主にイエロゴールド、ホワイトゴールドが100本程度、ローズゴールドが2本、製造中止された1997年にホワイトゴールドケースからプラチナケースに変えられた時計が2本存在します。
ムーブメントはCal.27-460Q
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27-460Qはイエローゴールドのローターを備え、巻き上げ効率に優れた機械です。
3448はダイヤルにより4つのシリーズに分けることができます。
シリーズ1-3グラン・フー・エナメルダイヤル
1st 1962-66
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日付のサイズが大きいのが特徴。11-23までの数字が見やすくなるように反転している。6時位置の表記が「SWISS」のみ
2nd 1965-73
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日付のサイズが1stより小さ目。11-23の数字が反転しているものと反転していないものが存在。1970年以降の文字盤にはSWISSの両脇にシグママーク(σ)が付きます。※ミニッツトラックがパールですが1stのような点も存在します。↓
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3rd 1971-78
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1stより日付が大きいのが特徴。11-23の数字が反転しているものと反転していないものが存在。SWISSの両脇にシグママーク(σ)が付きます。
4th 1978-81
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4thのダイヤルはエナメル加工ではなくプリントされた真鍮製。SWISSの両脇にシグママーク(σ)
この4種類についてはonbehalfさんのBLOGではかなり掘り下げて書かれてます。
https://onbehalf.jp/column/48/
またムーンフェイズの無い文字盤も存在します。
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製造された586本のうち7つのみムーンフェイズディスクが削除され6つには何も書かれておらず「センツァ・ルナ」と呼ばれています。残り1本は↓へ
3448 1975年
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上記の「センツァ・ルナ」以外の1本にうるう年が表記されます。スターン・フレール社製の文字盤でうるう年を表記するプロトタイプとして製造された模様。この表記の仕方は後に3940などに継承されます。
2021年5月22日に香港のクリスティーズで出品されるそうです。
https://www.christies.com/en/auction/important-watches-19858-hgk/?lid=1&sc_lang=en
落札予想がHKD 24,800,000-40,000,000(3億4千~5億6千万)
予想を超えてくるような気がしますが、一体いくらの値段が付くのか楽しみですね。
3450 1981-85年
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うるう年表記を備えた自動巻きパーペチュアルカレンダー。計244本製造され、242本がイエローゴールド、2本がホワイトゴールド。1975年の3448とは違いうるう年表記が3時位置のディスクで表示されます。このモデル以降うるう年が表示されるようになり、時間の調整が楽になりました。
うるう年表記以外は3448とほぼ同じ。ケースサイズは37.5mm、ムーブメントは27-460QB
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前期、後期型と存在し、前期型は3時の表示が「1-3」の数字と「4」のうるう年は赤一色の表示になります。後期型は「4」まで数字。
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どちらかというと数字の「4」のほうがいいですね…
またローマ数字の文字盤も存在し、うるう年表記もローマ数字です。
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3940 1985-2006年
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インダイヤルにうるう年表記を備えた自動巻きパーペチュアルカレンダー。1985年から2006年と20年以上も製造されたモデル。20年間で約7000~8000本製造され、これ以降のモデルはこれ以前のモデルに比べて比較的値段が控えめになっています。(それでも高いですが…)
ケースサイズ36mm
ムーブメントはマイクロローターを備えたCal.240Q
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1998年頃にCal.240/114にマイナーチェンジします。(240Qとほぼ同じです。)
3時位置にうるう年、月
6時位置にムーンフェイズ、日
9時位置に24時間計、曜日
がそれぞれ表示されます。
20年と長期に渡り製造されたため大きく分けると3種類+1種に分けることができます。
最初期 1985
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フィリップ・スターンは3940を製造し始めた時に、バイヤー・クロノメトリーというスイスの時計店の225周年(1760年創業)を記念し最初の25本の文字盤に「BEYER」の文字と「No.」を刻みました。1~15本目にはドイツ語のカレンダー、16~25本目には英語のカレンダーが付いています。
1st 1985-87
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3時と9時のインダイヤルに窪みの見られるダイヤル。生産数が700本のみのモデル。珍しいシャンパン文字盤も存在します。
もう1つ特徴はシースルーバックではなく、またケースサイドに金の刻印が施されます。
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2nd 1987-89
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インダイヤルのデザインが1stから変わり、3時の月、9時の曜日まで窪みが追加され、2段階の窪みが見られます。生産数は800本と言われています
3rd 1989-2006
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うるう年表記に分割の線が入ります。
この3rd世代の途中でケースバックがシースルーバックに変わります。(プラチナ以外)また金の刻印もケースサイドからラグの裏に移ります。
それと1995年頃からダイヤルのフォントも変更されます。
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「J」の文字の一画目の横が無くなっているので、これを比較すると簡単に見分けることができます。
※1990年までのシースルーバックではない時代にシースルーバックモデルの3941が存在します。基本的なスペックは変わらずにケースバックだけが異なるモデルで、約35本製造されたとされています。
5040 1992-2007年
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初のクッションケース型パーペチュアルカレンダー。ケースサイズ35mm。ムーブメントは3940と同じCal.240Q。ムーブメントが同じなのでレイアウトは3940と一緒ですが、インデックスはブレゲ数字。
5050 1993-2002年
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1937年に製造された96のパーペチュアルカレンダーからデザインを引き継いだレトログラードモデル。35mmとやや小振りで、1937年の時計より月と曜日の窓枠が外側になっており、そして12時位置にうるう年が表記されます。
ムーブメントはCal.315SQR
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240Qとは異なりマイクロローターではなく通常のローターで稼働します。
文字盤も数種類存在し、バーインデックス、ローマ数字、アラビア数字が製造されています。
5041 1995-2003年
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5040と同じくクッションケース型のパーペチュアルカレンダー。こちらもケースサイズ35mmでムーブメントもCal.240Q。5040との違いはケースが5041のほうが角ばっておりベゼルが平坦になっています。またホワイトゴールドケースで黒文字盤ブレゲ数字のみ生産され、その数が30本程と言われています。
生産本数は少ないですが値段はそこまで高くはなく、オークションで600万程度で落札されています。
5039 1996-2007年
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3940の「クルードパリベゼル」仕様。ケースサイズも同じく36mmでムーブメントもCal.240Q。文字盤も同じのを使っているかも…?
5059 1999-2006年
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5050の後継機。ケースサイズは35mmから36mmになり、ムーブメントは5050と同じCal.315SQR。文字盤のレイアウトも同じく、レトログラードパーペチュアルカレンダー。
オフィサーモデルの特徴である、開閉式の裏蓋の「ハンターケース」、「ネジ付きラグ」、「玉ねぎ型リューズ」を兼ね備えています。
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5140 2006-2016年
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3940の後継モデル。ケースサイズが約1mm大きくなり37.2mmに。ムーブメントは引き続きマイクロローターを備えたCal.240Q
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ムーブメントを同じくケースサイズがでかくなったので、インデックスはやや大きくなり、(3時9時を比べるとすぐに分かります。)インダイヤルの文字も大きくなります。左3940、右5140
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5140J-001(2006-2016)
5140G-001(2006-2016)
5140R-001(2006-2015)
5140R-011(2014-2016)
5140P-001(2006-2015)
5140P-013(2014-2016)ダイヤインデックス
5159 2007-2020年
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上記5059の後継モデルのレトログラードパーペチュアルカレンダー。「ハンターケース」、「ネジ付きラグ」、「玉ねぎ型リューズ」とオフィサーモデルの特徴をそのままに、ケースサイズが38mmと2mm大きくなり、より現代的に。文字盤中央にはギョーシェ模様が入ります。
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ムーブメントは変更になり、Cal.324SQR
315SQRが21600振動だったのに対して、324SQRは28800振動に上がります。
5159J-001(2007-2020)
5159G-001(2007-2020)
5159R-001(2007-2020)
5159G-012(2015)
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ロンドンブティック175周年を記念し製造されたモデル。通常のモデルと異なり、ブレゲ数字を採用。裏蓋には「PATEK PHIPPE LONON 2015」の文字が刻印されます。
5139 2008-2018年
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5039の後継で「クルードパリベゼル」仕様。ケースサイズが2mm大の38mm。ムーブメントは同じくマイクロローターを備えたCal.240Q
ホワイトゴールドのみの生産
5139G-001(2008-2010)
5139G-010(2011-2018)
5160 2010年-
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基本的に5159と同じですが、ケース全体、バックルまでも手作業で細かい彫刻がなされた時計という芸術品。パテックフィリップのサイトにも書いてありますが彫刻だけで1週間以上の時間がかかるそうです。
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腕時計初のパーペチュアルカレンダーであるRef.97975もハンターケースの手彫り彫刻がなされているので、それに準じた作品なのかもしれないですね。
5160J-001(2010-2013)
5160G-001(2012)
5160R-001(2013-2016)
5160/500G-1(2016-)
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現在生産中の5160/500G-1はインデックスがブレゲ数字で裏蓋に「PATEK PHLIPPE」の文字が刻印されます。
5496 2011-2020年
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カラトラバ96のリファレンスを持つモデル。1937の96を準えるレトログラードパーペチュアル。同じレトログラードの5159と同じくCal.324SQRを備えて、文字盤の配置も同じく12時にうるう年表記、3時に月、6時にムーンフェイズ、9時に曜日、中央にレトログラードの日付が表示されます。ケースサイズはやや大ぶりな39.5mm。
5496P-001(2011-2015)
5496P-014(2014-2016)
5496P-015(2016-2020)
5496R-001(2015-2020)
7140 2012年-
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レディース初のパーペチュアルカレンダーとして登場。メンズと同じムーブメントCal.240Qを搭載しているのでケースサイズはレディースのサイズとしては大きめな35.1mm。ベゼルには68個(0.68ct)のダイヤとバックルにも27個(0.2ct)のダイヤを装着
7140G-001(2012-)
7140R-001(2012-)
5940 2012-2019年
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5040の後継モデルのクッションケース型パーペチュアルカレンダー。一昔前のテレビに似ていることから「テレビスクリーン」とも呼ばれています。
5040(と5041)と同じくブレゲ数字、イエローゴールド文字盤外周にミニッツトラックを備えてますが、ホワイトゴールド、ローズゴールドには存在しません。
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ムーブメントはCal.240Q
5940J-001(2012-2016)
5940G-001(2014-2016)
5940G-010(2014-2018)
5940R-001(2017-2019)
5327 2016年-
image credit:jaztime
5140の後継モデル。ケースサイズが37.2mmから39mmになり、インデックスはブレゲ数字に。ムーブメントはCal.240Q。1985年のRef.3940から240Qが使われているということは素晴らしいムーブメントということなのでしょう。
5327J-001(2016-)
5327G-001(2016-)
5327R-001(2016-)
5320G-001 2017年-
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1944に製造されたRef.1591を彷彿とさせるモデル。ペンシル針やアラビア数字を模して、クリームの文字盤がレトロな雰囲気に。ラグは何故か3段にわかれていますが、ベゼルも3449の3番目のように3段にして欲しかったかも。
Cal.324SQ
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窓枠に月、曜日、6時位置にムーンフェイズ、日付、両脇にうるう年表記と昼夜表示を備えています。
5140/1G-001 2018年-