パテックフィリップのワールドタイムの歴史は1930年代後半から始まります。
当時としては瞬時に他国の時間がわかる画期的なシステムであったに違いません。今じゃそんなに有難くはないですが…
ワールドタイムのメカニズムは時計技師であるルイコティエ氏(1894-1966)により発明されます。
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このメカニズムは年代を重ねるごとに進化していきます。ワールドタイムの歴代のモデルを見ていきましょう。
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515HU(1937)
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96HUと共にパテックフィリップで最初にワールドタイム機構を搭載した時計。トノー型で今ではないデザインをしています。オーダーで製造されたプロトタイプとも言われています。かなり数が少なく市場に登場したのは1つだけです。今のワールドタイムとは違い28個の都市は固定されています。
ケース径は25*42mm
リファレンスにつくHUとはパテックフィリップで「ワールドタイム」の意味を持つ言葉で、最近ではキャリバー名にも付きます。
96HU(1937)
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515HUと同時期に製造。カラトラバ96にワールドタイム機構を搭載します。パテックフィリップとしてはインパクトある売り方をしたかったのでカラトラバとして登場させたらしいです。当時の反応はどうだったかはわかりませんが…。ちなみに96HUの文字盤にはパテックフィリップの文字はありません。
2011のクリスティーズのオークションでは411,000スイスフランで落札されています。単純計算で4000万円以上の値段が付いています。凄い金額ですね!
542HU(1937-38)
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パテックフィリップとして商業的に生産したとされたワールドタイム。かなり小振りでケース径は28mm。参照できる時間は31都市に増え、ベゼルは手動で回転させることができます。
1415HU(1939-53)
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製造期間は長めですが、生産された本数は100-150個と言われています。ケース径は31mmと96ぐらいになります。ティアドロップ型のラグが特徴的な時計。
ムーブメントには12-120HUを搭載
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1415HUのほとんどはイエローゴールドかローズゴールドで製造されましたが、1つだけプラチナのモデルが見つかっており、2002年のアンティコルムオークションで6,603,500スイスフランで落札されています。96HUの価格の10倍以上で2002年のオークションだったと考えると凄まじい値段ですね。
また文字盤に七宝を採用したモデルもあります。
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この文字盤はスターン社に委託され、当時では一握りの熟練の職人しか製造できないほど難しい工程だったそうです。基本的にヨーロッパの大陸を描いていますが、極少数ユーラシア大陸を描いた文字盤もあります。
1415-1HU
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1415HUには1940年に医師であるP.シュミットという人物に特別に製造された1415-1と言われるモデルが存在します。脈拍数を図るためのクロノグラフ、暗いところでも光る夜光塗料を搭載し、医師に必要な機能を兼ね備えています。現在ではジュネーヴにあるパテックフィリップミュージアムで見ることができます。
1416HU(1939)
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見た目が1415に似ていますが、その通り、ラグがストレートになっただけで、他はすべて同じです。
2523HU(1953-65)
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41の都市を参照するディスクを引っさげて新たな進化を遂げて製造されたモデル。三つ葉みたいな短針が結構カワイイ。リューズを2つ携えて、右側のリューズ操作により都市のディスクを動かすことができます。現在のワールドタイムに通ずるところがあります。
ケース径は35.5mm
ムーブメント12-400HU
文字盤には3種類があります。ギョーシェ、ブルーエナメル、七宝エナメル
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七宝ではほとんどが北米大陸を描きますが、南米とユーラシア大陸がそれぞれ1つづつ存在します。それ以前に他のワールドタイムと同様にかなり個数が少なく、23本ほどしか製造されていないそうです。
基本的にイエローゴールドorローズゴールドの製造ですが1本だけホワイトゴールドモデルがあり、1415-1と共にパテックフィリップミュージアムに飾られています。
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2523-1HU
基本的に2523と同じですが、ケース径がわずかに大きくなり36mmになります。エナメル文字盤がなくなりギョーシェかプレーンの文字盤のみの製造になります。
605HU(1938-60’s)
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ワールドタイムは腕時計だけではなく懐中時計でも製造されていました。42の都市を表示し、44mmのケース径です。生産された本数は100本ほどといわれています。
ムーブメントはCal.17-170HU
七宝の文字盤も存在します。
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60年代で一端ワールドタイムの幕が閉じます。次に発表されるのは2000年と長い月日を待つことになります。